February 12 2008
翼なき鳥にも似たる椿かな
マブソン青眼
掲句の「翼なき鳥」という痛ましい姿に、デュマ・フィスの椿姫を重ねる読者は私だけではないだろう。『椿姫』は、社交界で「椿姫」とうたわれた美しい娼婦マルグリットと青年アルマンの悲恋の物語であるが、その名のゆえんは、ドレスの胸元に月の25日は白い椿、あと5日間を赤い椿を付けていたということからだった。この艶やかな描写に今でもはっと息をのむ。日本から西洋に渡った椿は、寒い季節でもつややかな葉や花を鑑賞することができることから「東洋のバラ」と呼ばれ、社交界ではこぞって椿の切り花を手にしていたといわれる。情熱の花として愛されているヨーロッパの椿に引きかえ、日本では美しくもあるが花ごと落ちることで不吉な側面も持っており、掲句が持つ印象は更に陰翳を濃くする。椿の樹下はまるで寿命の尽きた鳥たちの墓場でもあるように。〈鯉幟おろして雲の重みかな〉〈ああ地球から見た空は青かった〉『渡り鳥日記』(2008)所収。(土肥あき子)
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