20080117句(前日までの二句を含む)

January 1712008

 国の名は大白鳥と答えけり

                           対馬康子

鳥が各地の湖に飛来し越冬するシーズン、遠い灰色の空からみるみる大きくなる白鳥の一団が湖に着水する様はさぞ見事なことだろう。「大白鳥」という答えはどこから来たのだろうか。白鳥が旅立った国を問われたのか、質問を受けた人の出身地を問われていたのか、考えれば考えるほどその謎は深い。質問がよくわからなくてとんちんかんな返事をしてしまったとも考えられる。もしそうだとしてもこの答えはしごくロマンチックだ。「国の名」と「大白鳥」と関係なさそうなものが直結することで、夜空の白鳥座を連想したり、飛来する白鳥の故郷であるシベリアやロシアの大地を思ったりする。渡り鳥である白鳥は「ここまではロシア」「ここは中国」と、国を区別して飛んでくるわけではない。白鳥にとっては海を越えるとはいえ、ひとつづきの土地であり、北から南の湖へ渡るという本能に従っているだけである。ヒトが普段の生活で意識している国名というものがどれだけ便宜上のものであり、地球的規模からいえば無用なものであるという事実がかえってこの答えから感じられる。日常よくみられる受け答えの勘違い、その呼吸に合わせて広がりのある世界を描き出した句だと思う。『対馬康子集』(2003)所収。(三宅やよい)




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