January 11 2008
現身の暈顕れしくさめかな
真鍋呉夫
うつしみのかさあらはれしくさめかなと読む。暈は、太陽や月の周辺に現れる淡い光の輪のこと。くしゃみをした瞬間、その人の体の周辺に暈が茫と出現した。くしゃみだからこそ、生きてここに在ることの不思議と有り難さと哀しみが滲む。六十年代のテレビ映画の「コンバット」は一話完結の戦争物として一世を風靡したが、その一話に、戦友の姿が曇って見えると必ずその人が戦死することに気づいた兵士の話があった。兵士は次第に自分の能力が怖くなる。ある日鏡に映った自分の姿が曇って見える。その日は前線から後方へ移動する日で、みなこの兵士を羨んだが、兵士は移動の途中地雷でジープごと吹っ飛ぶ。この話の「曇り」は仕掛けもオチもあるけれど、この句の暈は感覚が中心で、理屈で始末のつくオチがない。どこか生と死の深遠に触れている怖ろしさがある。くさめというおかしみを通して存在の深遠に触れる。こういうのを俳諧の本格というのだろう。『定本雪女』(1998)所収。(今井 聖)
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