本年もご愛読ありがとうございました。佳いお年をお迎えください。(執筆者一同)




20071231句(前日までの二句を含む)

December 31122007

 どこを風が吹くかと寝たり大三十日

                           小林一茶

のときの一茶が、どういう生活状態にあったのかは知らない。世間の人々が何か神妙な顔つきで除夜を過ごしているのが、たまらなく嫌に思えたのだろう。なにが大三十日(大晦日)だ、さっさと寝ちまうにかぎると、世をすねている。この態度にはたぶんに一茶の気質から来ているものもあるだろうが、実際、金もなければ家族もいないという情況に置かれれば、大晦日や新年ほど味気ないものはない。索漠鬱々たる気分になる。布団を引っかぶって寝てしまうほうが、まだマシなのである。私にも、そんな大晦日と正月があった。世間が冷たく感じられ、ひとり除け者になったような気分だった。また、世をすねているわけではないが、蕪村にも「いざや寝ん元日はまた翌のこと」がある。「翌」は「あす」と読む。伝統的な風習を重んじた昔でも、こんなふうにさばさばとした人もいたということだ。今夜の私も、すねるでもなく気張るでもなく、蕪村みたいに早寝してしまうだろう。そういえば、ここ三十年くらいは、一度も除夜の鐘を聞いたことがない。それでは早寝の方も夜更かしする方も、みなさまにとって来る年が佳い年でありますようにお祈りしております。『大歳時記・第二巻』(1989・集英社)所載。(清水哲男)




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