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December 27122007

 太箸に飼犬の名も加えけり

                           清水凡亭

日は御用納め。週末から年用意を始められる方も多いだろう。太箸は新年の雑煮の餅をいただくのに、折れては縁起が悪いので柳などで作られるという。赤や金のふち飾りのある箸袋へ墨をたっぷり含ませた筆で家族一人ひとりの名前を書いてゆく。娘や息子も別世帯を持ちいまや家族は夫婦のみ。あまった箸袋の一つに飼い犬の名前を書いてやる。昔は犬を人間なみに扱う飼い主をどうかと思っていたけど、身近に犬を飼うようになりその温もりに慰められている今となっては作者の気持ちはよくわかる。家族が共に過ごす時間はずっと続くかのように見えて限られているもの。いつもテーブルの下にいる犬の名前を書き添えた太箸をテーブルに置いてお雑煮をいただく。これが猫の飼い主なら箸袋に飼い猫の名前を書くだろうか?何となく猫派は書かないような気がするのだけど、どうだろう。作者凡亭は清水達夫「戦後雑誌の父」とも言われた編集者。初代編集長をつとめた「平凡パンチ」「週刊平凡」を百万部雑誌に育てあげたと、その略歴にある。「生涯一編集者かな初暦」「本つくる話はたのし炉辺の酒」これらの句にあるように最後の最後まで編集に意欲を燃やし、新しい雑誌の企画を仲間と練り続けた人だったらしい。『ネクタイ』(1993)所収。(三宅やよい)


January 1312016

 初暦知らぬ月日の美しく

                           吉屋信子

が改まると同時に、どこの家でもいっせいに替わるのが暦(カレンダー)である。真新しくて色彩やスタイルがさまざまな暦が、この一年の展開をまだ知らない人々の心に、新しい期待の風を吹きこんでくれる。心地よい風、厳しい風、いろいろであろう。この先、どんな日々が個人や世のなかにまき起こすことになるのか、まだ予想もつかない。せめて先々の月日は「美しく」あってほしいと誰もが願う。何十年と齢を重ねてくると、だいたいあまり過剰な期待はもたなくなってくる。悲しいことに、その多くが裏切られてきたから。ことに昨今の国内外の穏やかならぬ想定外の事件や事故の数々。わが身のこととて先が読めない。いつ何が起こっても不思議はない。せめて「知らぬ月日」は「美しく」と切望しておきたい。加藤楸邨の句ではないが、まさに「子に来るもの我にもう来ず初暦」である。『新歳時記・新年』(1996)所収。(八木忠栄)




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