鉄道の人身事故が多発。ほとんどが「自殺」だろう。こんな社会に誰がした。(哲




20071023句(前日までの二句を含む)

October 23102007

 鰯雲人を赦すに時かけて

                           九牛なみ

積雲は、空の高い位置にできる小さなかたまりがたくさん集まったように見える雲で、鰯(いわし)雲や鱗(うろこ)雲と呼ばれる。夏目漱石の小説『三四郎』のなかで、空に浮く半透明の雲を見上げて、三四郎の先輩野々宮が「こうやって下から見ると、ちっとも動いていない。しかしあれで地上に起こる颶風以上の速力で動いているんですよ」と語りかける場面がある。上京したての青年に起こるその後の葛藤を暗示しているような言葉である。印象深い鰯雲の句の多くは、その細々とした形態を心情に映したものが多い。加藤楸邨の〈鰯雲人に告ぐべきことならず〉や、安住敦の〈妻がゐて子がゐて孤独いわし雲〉も、胸におさめたわだかまりを鰯雲に投影している。掲句もまた、千々に乱れつつもいつとはなく癒えていく心のありようを、空に広がる雲に重ねている。鰯雲の一片一片には、ささくれだった心の原因となったさまざまな出来事が込められてはいるが、それらがゆっくりと一定方向に流れ、薄まりつつ触れ合う様子は、胸のうちそのものであろう。三四郎もまた、かき乱された心を持て余し、彼女が好きだった秋の雲を思い浮かべながら「迷羊(ストレイ・シープ)、迷羊(ストレイ・シープ)」とつぶやいて小説『三四郎』は終わるのだった。『ワタクシと私』(2007)所収。(土肥あき子)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます