October 18 2007
柿を見て柿の話を父と祖父
塩見恵介
角の家にいっぱい実った柿がカラスの餌食になってゆく。柔らかく甘い果物が簡単に買える昨今、庭の柿の実をもいで食べる人は少ないのだろうか、よその家の柿を失敬しようとしてコラッと怒られるサザエさんちのカツオのような少年もいなくなってしまった。地方では嫁入りのときに柿の苗木を持参して嫁ぎ先の庭に植え、老いて死んではその枝で作った箸で骨を拾われるという。あの世へ行った魂が家の柿の木に帰ってくるという伝承もあるそうだ。地味で目立たないけど庭の柿はいつも家族の生活を見守っている。春先にはつやつや光る柿若葉が美しく、白く小さな花をつけたあとには赤ちゃんの握りこぶしほどの青柿が出来る。柿の実が赤く色づく頃、普段はあまり言葉のやりとりがない父と祖父が珍しく肩を並べて柿の木を見上げながら何やら嬉しそうに話している。「今年は実がようなったね」「夏が暑いと、実も甘くなるのかねぇ」というように。夫婦や親子の会話はそんな風にさりげなくとりとめのないものだろう。掲句には柿を見て柿の話をしている父と祖父、その様子を少し距離を置いて見ている作者と、柿を中心にしっとりつながる家族の情景を明るく澄み切った秋の空気とともに描きだしている。『泉こぽ』(2007)所収。(三宅やよい)
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