August 302007
みなでかぐへくそかづらのへのにほひ
松本秀一
へくそかずらは漢字で書くと「屁糞蔓」。写真を見ると中心に濃い紅色を置いた白い可憐な花なのに、どうしてこんな身も蓋もない名前をつけられてしまったのだろう。枝や葉に匂いがあるらしいけど、そんなに臭いのだろうか。まだ嗅いだことのない私にはわからないけど、この名をみると確かめてみたくなる。俳人はちょっと変わった植物が好みの人が多い。イヌフグリ同様、へくそかずらにもファンが多いことだろう。分類では晩夏になっているが、9月ごろまでその姿を見ることができるようだ。「これ、へくそかずらだよ」「へぇーこれがね」吟行へ出かけても一人は植物の名や鳥の名前に詳しい人がいる。そんな仲間に教えられみんなで頭を寄せ合ってへくそかずらをふんふん鼻をならして嗅いでいるのだろう。子供達が膝を折って輪になって座り「臭いね、ほんとに臭いね」と花を回して確かめ合っている様子なども想像されて楽しい。ひらがなに揃えた旧仮名の表記がへのへのもへじのようで、ユーモラスだし「へのにほひ」とずばり切り込みながらも下品にならず、牧歌的な情景とともにしっかりと記憶に残る。もし「へくそかずら」と出会う機会があるなら、この句を思い出しながら匂いを嗅いでみたい。『早苗の空』(2006)所収。(三宅やよい)
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