August 20 2007
輪ゴム一山八月の校長室
横山香代子
作者は教師だったから、このとき何かの用事で校長室に入ったのだろう。「八月」なので夏休み中であり、校長室の主は不在だ。その昔、私が中学生だった頃に一度か二度、校長室なる厳めしそうな部屋に呼ばれて入ったことがあるけれど、壁にかけられていた歴代校長の肖像写真(画)を除いては、何があったのかは覚えていない。緊張していたせいもあるのだろうが、校長室なんて部屋にはもともと特殊なものは置かれていないのが普通のようだ。職員室のような雑然とした趣はない。もちろん生徒の目と教師の目とでは、同じ校長室に入ったとしても見るところは異なるはずだが、掲句の「輪ゴム一山」となれば、誰だって不思議に思う。なぜ、校長の机の上に輪ゴムが、それも一山も置いてあるのだろうか。謎めいて写る。でも、この句はそうした謎に焦点を当てているわけではない。そうではなくて、夏休み中の学校全体の雰囲気を、校長室の輪ゴムの山からいわばパラフレーズしてみせているのだ。日常とは切れている時空間のありよう……。たまに会社に休日出勤しても、これに類したことを体験することがある。『人』(2007)所収。(清水哲男)
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