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July 2872007

 漂へるもののかたちや夜光虫

                           岡田耿陽

光虫、虫の字を持ちながら植物性プランクトンで、海水の温度が三十度前後になると発生するといい夏季に分類されている。昼間海岸沿いに目にする赤潮には、夜間青白く光る夜光虫によるものもあると今回知った。漁師町に生まれ育った耿陽(こうよう)には、海に因んだ句が多く見られるのだが、特に夜光虫については、「耿陽によって明るみに出た季題」とも言われているようだ。そんな作者の、夜光虫の徹底的な写生句のその先にこの句があった。昭和四年の作である。青白い夜光虫の群を水中から見ていると、宇宙空間にいるようだという。まさに、ふれたものの輪郭を光る夜光虫。陸でいえば蛍もそうだが、真闇に光る生きものは、それを目の当たりにしたものに魂や生命を思わせる。作者は、幾たびも夜光虫に出会い、その幻想的な光を見るうち、概念をこえた造化の不思議や無常をも感じたのかもしれない。もののかたちもののかたち、とくり返しつぶやいていると、自分をとりかこんでいるあらゆるものの存在が、ゆらゆらと遠ざかってゆくような心持ちになる。『句生涯』(1981)所収。(今井肖子)




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