↓英文のステッカーには加えて「怪しい人間も」と書いてある。この違いは何か。(哲




20070712句(前日までの二句を含む)

July 1272007

 噴水とまりあらがねの鶴歩み出す

                           宮入 聖

物をかたどった噴水はいろいろあるが、鶴の噴水で思い出すのは、丸山薫の「鶴は飛ぼうとした瞬間、こみ上げてくる水の珠(たま)に喉をつらぬかれてしまつた。以来仰向いたまま、なんのためにこうなったのだ?と考えている。」(『詞華集 少年』「噴水」より引用)という詩だ。この噴水は日比谷公園の池の真ん中にある鶴の噴水がモデルのようだ。写真を見ると大きな羽根を広げた仰向けの姿勢で細い嘴から水を勢いよく飛ばしている。掲句の「鶴」が日比谷公園の鶴か、作者の想像の産物なのかはわからないが、噴水が止まって歩き出すあらがね(租金)の鶴は、丸山薫の鶴のその後といった感じだ。詩を知らなくとも噴水が止まって動くはずのない鶴が歩き出すシーンを想像して楽しむだけでも充分かもしれないが、詩人が作り出した鶴のイメージをかぶせてみると、句の世界がより豊かになるように思う。垂直にほとばしる噴水のいきおいが急に止まったなら、全身を水に貫かれてしまった鶴も水から解き放たれ、重々しい一歩を前に踏み出しそうだ。栓をひねれば瞬時にして消えてしまう噴水のはかなさと金属の永続性。重さと軽さ。相反した要素を噛み合わせながら、静止と動きが入れ替わる白昼の不可思議な世界を描き出している。『聖母帖』(1981)所収。(三宅やよい)




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