この写真は五月に博多で撮影。博多祇園山笠、『博多っ子純情』でしか知らない。(哲




20070703句(前日までの二句を含む)

July 0372007

 風ここに変り虚のかたつむり

                           柚木紀子

書きに「谷川岳一の倉沢から幽の沢へ」とある。虚には「うつせ」のルビ。一の倉沢から幽の沢は、北アルプスの穂高、劔岳とともに、日本三大岩場と称するほど人気があるといわれる岩場だ。登山とはまったく縁のない生活をしているが、昨年7月同地を歩く機会を得た。一の倉沢出合まで車で、そこから一時間ほどの登山ともいえぬトレッキングだったが、幽の沢では一気に風の気配が変わり、足元から吹き上がる風に押し戻されるように思えた。ここから先へ行くのか、と山に念を押されているような風である。ここで頷いてしまう者たちが、山に魅入られてしまうのだろう。山肌に打ち付けられた何枚ものプレートは、「魔の山」の異名を持つ谷川岳で遭難したクライマーたちの発見された場所だという。発見される場所が集中しているのは、まるで山が自ら、魅入られた者たちの弔い場所を定めているかのようだ。渦巻きのなかに溶けて消えてしまったようなかたつむりの骸(むくろ)が、ここで落としていった命の器に思えてくる。〈土に置く山の鎮めの桃五つ〉〈いましがた虹になりたる雫かな〉駐車場に戻ると、涙が固まってできたような雪渓を前に、呆然と絶壁を見あげる人たちの姿を見た。『曜野』(2007)所収。(土肥あき子)




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