厚労省、コムスン事業所の更新などを認めず。介護は民間企業になじまないと思う。(哲




20070607句(前日までの二句を含む)

June 0762007

 赤ん坊のかなしみ移る赤ん坊

                           和泉香津子

育所や小児科の待合室で隣り合わせた赤ん坊の一人が泣き始めると、じっとその様子を見ていた近くの赤ん坊の目が潤み、真っ黒な瞳にみるみる涙がせりあがってくるそんなシーンが想像される。言葉がまだ話せない赤ん坊だからこそ、喜び、怒り、苛立ち、といった感情はストレートに伝わるのだろう。風邪のように、かなしみが「移る」と表現したところに発見がある。夜泣きしている赤ちゃんも抱っこしているお母さんがイライラしているとよけい激しく泣く。赤ちゃんは柔らかい身体全体に感情を探知するアンテナを持っているみたいだ。掲句の中心になるのは「赤ん坊」という初々しい生命体に宿る「かなしみ」という感情だろうが、ひらがな書きのこの言葉に漢字を当てるとしたらどれだろう。漢和辞典を調べてみると「哀」は心に哀れさを生じさせる感情で反対語は「楽」になっている。「悲」はものに感じて心がせつなく思う気持ち、不幸などに遭って泣きたくなる気持ちで反対語は「喜」になっている。赤ん坊の状態を思うと、どちらも当てはまるようにも思うが、「悲しみ」が近いだろうか。今まで母親の胎内にしっかり抱かれていた赤ん坊にとっては一人で寝かされることもかなしみの種なのだろうか。おしめも濡れていない、ミルクもやったばかりの赤ん坊が理由もなく泣き出すのは空漠とした世界に生み落とされた心細さに耐えかねて泣いているのかもしれない。『現代俳句12人集』(1986)所載。(三宅やよい)




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