ゴールデンウイークどころじゃない。と言っても皆様には無関係。人に事情あり。(哲




20070428句(前日までの二句を含む)

April 2842007

 書庫瞑しゆふべおぼろの書魔あそぶ

                           竹下しづの女

、春の夜の物みな朦朧とした感じをいう、と歳時記にある。春特有のぼんやりとした景をいう時、日中は霞、夜は朧、と区別するというが、朧は、草朧や鐘朧のように、ものの形や音の響きが漠としていることを表すこともある。また、さらりと平面的な霞にくらべて、朧には茫洋とした中にどこか妖しさが潜んでいるようにも思える。書物は生きものではないけれど、そこには言霊が文字となって宿っている。子供の頃、昼でも薄暗い図書館の書庫で、あれこれ本を手にとって読むのは幸せな時間だったが、ふと気がつくとまわりに誰もいなかったりすると、不思議な不安感にとらわれたものだ。書魔は、作者の造語というが、それぞれの本にはまさにそんな魔力を持った何かが息づいているように思える。夫が急逝し、五人の子と共にのこされた作者は、その翌年から福岡県立図書館に勤務している。読書欲旺盛で学問好きだったというから、願ってもない職場であったことだろう。日が落ちて、春の宵闇に包まれようとしている書庫の、ほのかに黴臭いような空気感までが、朧という季題を得て不思議なリアリティをもって描かれている。次男、健次郎氏編のこの本の帯には、「理知と才気に溢れた現代女流俳句の先駆者」と書かれている。表紙の隅にはしづの女の写真。ふっくらとした頬に微笑みを浮かべ、少し戸惑っているようにも見える。『解説しづの女句文集』(2000・梓書院)所載。(今井肖子)




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