オフィスのある高田馬場は受験生で大混雑。昔の我が身がほろ苦く思い出される。(哲




20070222句(前日までの二句を含む)

February 2222007

 春光や家なき人も物を干す

                           和田 誠

光は春の訪れを告げ、物みな輝かす明るさを持った光。まだ寒く冷たい風が吹き荒れる日も多いけど、黒い古瓦に照り返す日差しがまぶしい。小学生のときに読んだ『家なき子』は少年レミが生き別れた親を探す話だったが、現在の「家なき人」は住みどころなく仮住まいを余儀なくされている人たちだろう。公園の片隅や川の土手にありあわせの材料で小屋を建てる。多重債務。家庭崩壊。病気。失職。自ら競争社会に見切りをつけた人もいるかもしれない。酷薄な福祉環境へ変わりつつある今の日本では明日どんな運命が待ち構えているかわかったものではない。ホームレスではなく「家なき人」と表現したところに既成の言葉に寄りかからない作者の見方が表れているように思う。仮住まいをしている人たちにも生活がある。春の光があふれる公園で、冬の間に湿った蒲団を干し、ありったけの服を洗濯する。何年前だったか、とある春の午後、隅田川の土手に仮住まいをしているおじさんが家財道具を干し出したそばの椅子に腰掛け、上流に向う水上バスにしきりに手を振っているのを見たことがある。水上バスのデッキに出ている人達も笑顔で手を振り返す。春日はきらきらと隅田川の川面に光り、手を振る人も白い水上バスも景色の中に輝いて見えた。『白い嘘』(2002)所収。(三宅やよい)




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