今の入学祝いには何を贈れば良いのだろう。昔は腕時計だったり万年筆だったけれど。(哲




20070208句(前日までの二句を含む)

February 0822007

 白梅の空は産湯の匂かな

                           石母田星人

田龍太の句に「白梅のあと紅梅の深空(みそら)あり」とあるように、春に先がけて咲くのは白梅が多いのだろうか。中国から渡来した順も白梅からだったらしく、天平時代和歌に詠まれた梅は全て白梅だったと歳時記の記述にある。東京は暖冬のせいか一月末にもう紅梅が咲いていたが、日増しに明るさを増す早春の空にはさっぱりと清潔な白梅が似つかわしい。産湯は生まれたての赤子の汚れを落とすだけでなく、外気に触れて冷えた身体を羊水とほぼ同じ温度で温める効用があるという。この産湯が遠い昔に自分が浸かっただろう湯の匂いを想像しているのか、生まれたての赤子を父として抱き上げた時ふっと感じた匂いなのかわからないが、あるかなきかの淡い香だろう。とはいっても作者は産湯と白梅の匂いを単純に結びつけているのではない。白梅の間から透かし見る早春の空と梅の香りの調和に、季節が生まれでる予感を感じているのだ。春と呼ぶにはまだ寒いけれど、見渡せば赤味を帯びた裸木の梢に、道端の下萌えに春は確実に近づいている。初々しい季節の誕生に託して、誰もが産湯につかってこの世に迎え入れられた。そんな当たり前の事実を懐かしく思い起こさせる一句である。『濫觴』(2004)所収。(三宅やよい)




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