実際には一年で最も寒い月の始まりのはずですが、東京はすっかり春めいて……。(哲




20070201句(前日までの二句を含む)

February 0122007

 鴨沢山呼んであります来ませんか

                           ふけとしこ

は普段でも目にする鳥だが、1月から4月にかけて越冬のためシベリア付近から飛来するという。マガモ、オナガ、コガモ、同じ鴨でもよく見ると首の長さや身体の大きさに違いがあることがわかる。春近い陽射しを受けて鴨達の羽根がきれいに光っている。池に群れている鴨は誰かに呼ばれて来ているわけではないが、こう書かれてみると鴨好きのあなたのために作者が集めてくれたみたいだ。こんな俳句が載った吟行案内のハガキを受けとったら、何を置いてもいそいそと出かけそう。例えば男の子がこの句の案内を見れば、レストランに可愛い女の子達が肩をぶつけあいながら座っている場面を想像するかもしれないし、狩猟好きのおじさんなら鉄砲をかついですぐさま出掛けて行きそうだ。読み手の立場で楽しい想像がいくらでも広がっていく。このふくらみは呼びかけの間の小休止が切れとして効果的に効いているからだろう。そして「鴨」は生活に密着したところで様々な成語になっているので、読み手の連想によって多義的な表情を見せることができる。動植物に親しい作者は、彼らの生態とともにその名前が多彩なイメージを生み出す秘密を知っているようだ。「仏の座光の粒が来て泊まる」『ふけとしこ句集』(2006)所収。(三宅やよい)




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