20061224句(前日までの二句を含む)

December 24122006

 聖菓切るためにサンタをつまみ出す

                           松浦敬親

リスマスイブです。わたしの勤める会社は外資系企業なので、オフィスの中にもクリスマスツリーがいくつも飾られています。この季節になると、一ヶ月くらい前からさまざまな場所のさまざまなものに、光の服が着せられます。ついでながら、サンタクロースに赤い服を初めて着せたのは、コカコーラのコマーシャルでした。それがそのままサンタの服として定着してしまったもののようです。掲句、クリスマスケーキをテーブルに置いて、イブの夜、家族の顔がその上に並んでいるのでしょう。わたしもこの日は、横浜ダイヤモンド地下街をうろうろします。毎年、イチゴのショートケーキにするか、チョコレートケーキにするか、家族の反応をしばし想像し、楽しく迷います。この句の家には小さな子どもがいるようです。「サンタをつまみ出す」という言い方が、なんともぞんざいな響きで、笑いをさそいます。「さあケーキを切りますよ」というお母さんの声に、ずっと目をつけていたサンタに手を伸ばしたのは、たぶん末っ子です。どのデコレーションをだれがとるかで、子どもたちの間でひと悶着あるのかもしれません。「つまみ出す」という言葉が、これほどにやさしい響きをもつことができるのも、この日だからなのでしょう。では、素敵なイブの日になりますように。メリークリスマス。『角川俳句大歳時記 冬』(角川書店・2006)所載。(松下育男)




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