20061215句(前日までの二句を含む)

December 15122006

 ヘッドライトに老人浮かぶ聖夜かな

                           鈴木鷹夫

人を見かけることが多くなった。幾つから老人というのか、どういうのを老人ふうというのか、そんなことは定かには言えないが、とにかくあらゆる場所に老人が増えている。出生率が減りつづけ、子供は少なく生んで、過保護に育てる。医療は進み平均寿命は延びる。その結果必然的に老人が氾濫する、街にも村にも道路にも。老人やその医療に関する用語も溢れている、介護、痴呆、ケア、独居、寝たきり等々。ヘッドライトをどこに当てても老人が映っている。おお主よ!僕にとって感慨深いのは、全共闘世代と言われた世代が還暦になること。その世代の末端にいた僕は先輩たちの明晰な論理と勇猛なる行動に目を瞠り、鼓舞され、その後の生き方と考え方に大きな影響を受けた。ときには学籍や就職も捨てて、或いは、獄につながれても巨大な権力と闘った学生たちの多くは、その後、意を屈して権力構造に組み込まれていく。僕もまさしく。しかし、先輩、同輩たちよ、もう停年なのだ。資本から、もうお前は要らないと言われたら、退職金だけちゃんともらって、アカンベエをしよう。アカンベエじゃすまないぞ。どてっぱらに一発喰らわせてやる。四十年という時間を買ってくれたお礼参りをしようぜ。『鈴木鷹夫句集』(現代俳句文庫・1999)所収。(今井 聖)




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