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20061027句(前日までの二句を含む)

October 27102006

 天つつぬけに木犀と豚にほふ

                           飯田龍太

が臭いのは豚のせいではなく、糞尿を処理してやらない人間のせいだと気づいたのは、僕が家畜試験場で暮していたから。豚はきれい好きな動物である。生まれたばかりの子豚の可愛さや放牧されている豚の賢さや個性は犬や猫と同じだ。小学生の僕が木切れをもって近づくと豚は一斉に柵の側に駆け寄って僕に背を向ける。木切れで背中を掻いてもらうためだ。「天つつぬけに」匂う対象として木犀と豚を同列に置いたのは、作者が豚の匂いを肯定的に捉えているからだと僕は思う。以前、或る雑誌の企画で、「世界中の子豚に捧げる」という文章を書いたとき、載せる写真を問われて、「僕が子豚を抱いているところを」と注文した。それは面白いかもということになり、雑誌社の方で子豚のいるところを探してもらうと、横浜市青葉区にある「こどもの国」という遊園地の中の動物園に子豚がいることが判明。僕は生まれたばかりの子豚を抱いてにこやかに撮られる自分を想像した。当日動物園に行くと、豚はいるにはいたが一抱えほどもあって、とても子豚とは言えない大きさ。どうしますと心配そうに聞くカメラマンに僕は「やるよ」と応えた。五、六頭が飼われている柵の中に僕は入り、逃げ回る奴等を追い回してようやく一頭を羽交い絞めにしたが、形相が怖かったらしく、しきりにカメラマンが「笑ってください」という。バックドロップのように抱き上げた豚の後足に蹴られながら無理に笑った泣き笑いの顔がその時の雑誌に載っている。このとき豚は確かに臭わなかったが、それは僕が必死だったせいかもしれない。『百戸の谿』(1954)所収。(今井 聖)




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