セミよりも早く起き、秋の虫よりも早く眠る毎日。過度の早寝早起きは不健康かな。(哲




20060825句(前日までの二句を含む)

August 2582006

 一夏の詩稿を浪に棄つべきか

                           山口誓子

分の書いたものがいまだかつて無かった高みに届いていると思い込むときがある。とくに疲れている日の深夜などは危ない。朝起きると作品にもう昨夜感じた輝きは失せている。そういう錯覚はともかく、詩人はときに昂然と自らへの詩神の到来を信じて詩作に没頭し、その結果産み出したものについて、ときに深く絶望する。いわば躁と鬱の両方を創作過程の中で体験するのである。中村草田男の「毒消し飲むやわが詩多産の夏来る」はまさに躁。夏の訪れとともに身体から毒を排出して詩作に没頭し、多産するのだ。悪魔も裸足で退散するような勢いである。そして、やがて、夏の終りとともに自己否定の鬱がやってくる。多産した詩の中の一篇ですら自分にとって価値を感じられるものがない。それらを全部まとめて浪に向って放り投げたくなる。二句並べてみると詩人というものの心の抑揚がよくわかる。『七曜』(1942)所収。(今井 聖)




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