August 122006
踊り込む桟敷の果の見えぬまま
稲畑汀子
季題は「踊」で秋。旧暦の七月、旧盆の盆踊のこと。この句の場合は阿波踊、詠まれたのはちょうど一年前である。踊り込んでいるのは作者自身で、七回目の阿波踊であったという。昨年の今頃私も阿波踊の渦の中にいた。「連」と呼ばれる集団が踊る、あちこちに輪を作り踊る、裏通りで一筋の笛に踊る、皆明るい。出を待ちながら見上げる桟敷は高くどこまでも続いて見えるが、一歩を踏み出せばあとはただ踊るのみ、体の芯に不思議な灯がともる。今日から始まる阿波踊、今年も盆の月が濡れていただろうか。俳誌「ホトトギス」(2006年1月号)所載。(今井肖子)
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