「共謀罪」創設法案を自公両党が強行採決の構えだ。戦前の密告社会の再現につながるぞ。




20060503句(前日までの二句を含む)

May 0352006

 風船をふくらます目に力あり

                           岸 ゆうこ

語は「風船」で春。「風車(かざぐるま)」も春の季語だが、なぜ両者は春なのだろうか。手元の歳時記を何冊か見てみると、それぞれにもっともらしい解説がなされている。なかでちょっと不可解だったのは、平井照敏編の河出文庫版に載っている「子供たちの春らしい玩具で、楽しいものである。明治二十三年上野公園でおこなわれたスペンサーの風船乗り以来のもの」という記述だ。スペンサーの風船乗りとは、スペンサーというイギリス人が気球に乗り、空中で曲芸を披露したショーである。これが大変な人気を呼んで、翌年には尾上菊五郎が歌舞伎の舞台に乗せたことでも有名だ。たしかに気球も風船には違いないけれど、俳句で言う風船のイメージとはあまりにかけ離れていて、スペンサーの風船乗りから季語ができたという平井説は納得できない。しかもこのショーがおこなわれたのは、十一月のことであった。ここは一つ、もう少し気楽に考えて、風船や風車をあえて四季のどれかに分類するのであれば、「なんとなく」春が似つかわしそうだくらいにしておいたほうがよさそうだ。さて、掲句は子供が真剣に風船をふくらませている図である。言われてみれば、なるほどと納得できる。風船をふくらますのには、理屈をこねれば「目の力」などはいらない。けれども、目にも力が入るのだ。誰でもが日常的に心当たりのあるシーンなのだが、それをこのように俳句にしたのは作者がはじめてだろう。なにもとっぴな発想をしなくとも、ちゃんとした俳句は詠めるという具体例としてあげておきたい。『炎環・新季語選』(2003)所載。(清水哲男)




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