みな不安気ですが、オフィスの防火訓練を見守る人々。アラブ首長国連邦。遠い国ですね。




20060220句(前日までの二句を含む)

February 2022006

 絵葉書の消印は流氷の町

                           大串 章

語は「流氷(りゅうひょう)」で春。結氷の初期に流氷をみることもあるようだが、豪壮な流氷をみるのはやはり春になってからだ。そんな「流氷の町」から絵葉書が届いた。紋別か網走か、それとも釧路あたりからだろうか。ただそれだけの句だけれど、この句は絵葉書というメディアの特性をよく伝えていて面白い。普通の葉書だと、私たちはあまり消印まで見たりはしないものだが、絵葉書の場合には消印まで読むことが多い。絵葉書はたいてい旅先からの便りだから、印刷されている画面や書かれた文面とは別に、消印が発信人の投函場所を客観的に保証するからである。そしてこの消印のほうが、受け取った側に、より詳細で興味深い情報をもたらすこともある。下世話に言えば、「へえっ、あいつはまたどうして、こんなところにまで出かけたのだろうか」などと、消印一つからいろいろなことが思われるのである。句の絵葉書にしても、絵(写真)や文面には流氷のことは何もなかったのかもしれない。広い北海道のどこからかの発信ということはわかったが、よくよく消印を見ると流氷の名所として知られた町からのものだった。それがわかったとなると、受け取った側では、いろいろと想像をめぐらしたくなってくる。が、作者はそのあたりの心の動きをあえて書かずに、ぽんと放り出している。それがかえって読者にインパクトを与えるのは、やはり俳句様式ならではの表現の面白さと言うべきだろう。『天風』(1999)所収。(清水哲男)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます