冬休みに入った孫を連れて、ドイツから娘が帰ってくる。少し遅めのお正月ということで。




20060214句(前日までの二句を含む)

February 1422006

 やけに効くバレンタインの日の辛子

                           三村純也

語は「バレンタインの日(バレンタインデー)」。すっかり定着した感のあるバレンタインの日。最初のころにはもぞもぞしていた俳人たちも、やっと最近では自在に扱うようになってきた。掲句も、その一つ。夕食の料理に添えて出された「辛子(からし)」が、普段とは違って「やけに効く」。思わず、妻にそのことを言いかけて止めたのだろう。そういえば、今日は「バレンタインの日」であった。もしかすると、日頃の行状の意趣返しとばかりに、チョコレートの代わりに辛子で何らかのきつい意思表示をされたのかもしれない。咄嗟にそう思ったからだ。いや、でもそんなはずはない。それは当方の思い過ごしというもので、第一,最前から彼女の様子を見ていると,今日が何の日であるかも忘れているようではないか。いや、でも待てよ。そこが、そもそも変だぞ。今日がどういう日かは、朝からテレビでうんざりするほどやっているし、ははあん、やつぱりこの辛子の効きようは尋常じゃない。だとすれば、何を怒っているのか。いったい、このオレに何を気づかせようというのだろうか。いや、それが何であれ、いまいちばん必要なのは冷静になることだ。それには、いつも通りに知らん顔して食べることだ。それにしても、よく効くなあ、この辛子……。などと、たまたまバレンタインの日であったがための取り越し苦労かもしれない「男はつらいよ」篇でした。『俳句手帖2006年春-夏』(富士見書房)所載。(清水哲男)




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