トリノ冬季五輪開幕。ほとんどの競技は我々が寝ている間に行われる。この悩ましき時差。




20060211句(前日までの二句を含む)

February 1122006

 机低過ぎ高過ぎて大試験

                           森田 峠

語は「大試験」で春。戦前は「大試験」というと、富安風生の「穂積文法最も苦手大試験」のように、学年試験や卒業試験のことだった。ちなみに「小試験」は学期末試験を言った。掲句の作者は戦後の高校教師だったから、句の情景は入学試験である。いつのころからか卒業試験は形骸化してしまった(ような)ので、現代で「大」の実感を伴うのは入学試験をおいて他にないだろう。作者は試験監督として教室を見渡しているわけだが、「机低過ぎ高過ぎて」とは言い得て妙だ。普段の教室ならば、背の高い順に後方から並ぶとか、生徒たちは何らかの規則的な配列で着席するので気にならないが、入試では受験番号順の着席になるから、背丈の凸凹が目立つのである。試験は試験の句でも、監督者の視点はやはり受験生のそれとはずいぶんと違っていて興味深い。ということは「大試験」の「大」の意識やニュアンスも、立場によって相当な差があることになる。受験生の「大」は合否の方向に絞られるが、監督者のそれは合否などは二の次で、とにかくトラブル無しに試験が終了することにあるということだ。いまの時期は、大試験の真っ最中。今年はとくに寒さが厳しいし、インフルエンザの流行もあって、受験生とその家族は大変だろう。月並みに、健闘を祈るとしか言いようがないけれど。『避暑散歩』(1973)所収。(清水哲男)




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