新居(新サーバー)への移転完了。いや待てよ、あと二三本釘を打つ必要があるな(笑)。




20051211句(前日までの二句を含む)

December 11122005

 冬木と石と冬木と石とありにけり

                           友岡子郷

語は「冬木(ふゆき)」。常緑樹も言うが、葉の落ちた木のほうが「冬木」の感じが色濃い。「寒木」と言うと、さらに語感が強まる。寂しい句だ。そして、良い句だ。「冬木と石と」、また重ねての「冬木と石と」。芸としてのリフレインというよりも、素朴でとつとつとした吃音のように聞こえてくる。すっかり葉が落ちた高い木と、地に凍てついた低い石と。しばらく歩を進めても、それだけしか無い世界。いや、他にいろいろとあっても、それだけしか目に入らない世界だ。しかも、おそらくは色も無く、さらには無音の世界なのである。この寂しい風景は、実景であると同時に作者の心象風景でもあるだろう。かつて稲垣足穂が言ったように、人間の関心は若年時には動物に向かい、年輪を重ねるに連れて植物へ、さらには鉱物へと移っていくようだ。だとすれば、この句には老境に差しかかった者の素直な視野が反映されている。寂しき充実。繰り返し読むうちに、そんな言葉がひとりでに湧いてきて、胸に沁み入るようである。今宵は眠りに落ちる前に、この句を反芻してみよう。深い孤独感が、永遠の眠りの何たるかを秘かに告げてくれるかもしれない。『雲の賦』(2005)所収。(清水哲男)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます