September 03 2005
薔薇の酒薔薇の風呂もて持て成さる
高橋とも子
季語は「薔薇」で夏。そのまんまの句なのだろうが、素材が尋常ではない。「薔薇の酒」「薔薇の風呂」とは、いったい何であろうか。知らないのは私だけかもしれないけれど、少年時代に、西欧の女優は牛乳風呂に入るのだそうなと聞いたときのような感じを受けた。その後しばらくして、マルティーヌ・キャロルの主演映画『浮気なカロリーヌ』を見たときに、ようやく納得した覚えがある。この映画、ストーリーとは関係なく、やたらに入浴シーンがあった。バスタブに湛えられた真っ白な液体の説明はなかったけれど、ひとり「ああ、これだな」と私は合点したものである。シャボンの泡だけでは、あの白さは出ないはずだ。そんな連想もあって,まず「薔薇の風呂」のおおよその見当はつき、念のためにとネットで検索してみたら、出てくるわ出てくるわ、知らなかったのはやはり私だけだったようだ。要するに、薔薇の花びらを浮かべた風呂であり、香りが良いらしい。ただ、野暮天としては,入った後の片付けが大変だろうなと、まずは思ってしまった次第だ。次なる「薔薇の酒」だが、どうやらこちらは知らなくても恥ではないようだ。見かけはワインだが、中味は日本酒という珍品だからだ。島根県の酒造会社が昨年,薔薇の花びらを日本酒に漬け込んで薔薇色を出すことに成功し,実験的に売り出したところ大いに売れたということだった。いずれにしても、薔薇づくしの「持て成し」とは豪勢な。そのまんまながら、むしろそのまんまに、句にとどめておきたかった作者の気持ちがわかるような気がする。俳誌「百鳥」(2005年9月号)所載。(清水哲男)
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