August 22 2005
向日葵に大学の留守つづきおり
鈴木六林男
季語は「向日葵(ひまわり)」で夏。「大学の留守」、すなわち暑中休暇中の大学である。閑散とした構内には,無心の向日葵のみが咲き連なっている。まだまだ休暇はつづいてゆく。向日葵が陽気な花であるだけに、学生たちのいない構内がよけいに寂しく感じられるということだろう。そして元気に若者たちが戻ってくる頃には,もう花は咲くこともないのである。私も学生時代に、一夏だけ夏休みに帰省せず,連日がらんとした構内を経験した。向日葵は植えられてなかったと思うが,蝉時雨降るグラウンド脇をひとりで歩いたりしていると、妙に人恋しくなったことを覚えている。誰か一人くらい、早く戻ってこないかな。と、その夏の休暇はやけに長く思われた。これには九月に入っても、クラスの半分くらいは戻ってこなかったせいもある。ようやくみんなの顔が揃うのは,月も半ば頃だったろうか。むろん夏休みの期間はきちんと決まってはいたけれど、そういうことにはあまり頓着なく、なんとなくずるずると休暇が明けていくのであった。そのあたりは教える側も心得たもので、休暇明け初回の授業の多くは休講だったような覚えがある。大学で教えている友人に聞くと,いまではすっかり様変わりしているらしい。学生はきちんと戻ってくるし,休講などとんでもないという話だった。大学も世知辛くなったということか。『王国』(1978)所収。(清水哲男)
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