June 24 2005
冷房の大スーパーに恩師老ゆ
林 朋子
季語は「冷房」で夏。長らく会うことのなかった「恩師」を、偶然にスーパーで見かけたのだろう。その人は、たぶん男性だ。「大スーパー」だから、二人の距離はだいぶ離れている。目撃しての第一印象は、「ああ、ずいぶんと歳をとられたなあ」ということであった。白髪が目立ち、姿勢も昔のようにしゃんとはしていない。近寄って挨拶するのも、なにかはばかられるような雰囲気である。スーパーでの男の買い物客は目立つ。とくに老人となると、よんどころなく買い物に来ているような雰囲気が濃厚で、気にかかる。妻や家族はいないのだろうか、あるいは病身の妻を抱えてるのだろうかなどと、むろん深く詮索するつもりもないのだが、ちらりとそんなことを思ってしまうのだ。ぎんぎんに冷房の効いた店内を、慣れない足取りで歩いている様子は、溌剌としていないだけに余計に年齢を感じさせるようなところがある。この後、作者はどうしたろうか。句の調子からして、ついに声をかけそびれたような気がするのだが……。これで見かけた場所が書店だったりすると、恩師もさまになっているので挨拶はしやすかっのだろうが、場所と人との関係は面白いものだ。ところで、私もたまにスーパーに買い物に行く。周囲の主婦たちのてきぱきとした動向に気を取られつつ、ついつられて余計なものを買ってしまったりする。目立っているのだろうな、おそらく私も。『森の晩餐』(1994)所収。(清水哲男)
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