このごろ友人知己の夢をよく見る。まるで今生のお別れにでも……。ってか、よせやい。




20050623句(前日までの二句を含む)

June 2362005

 噛めば苦そうな不味そうな蛍かな

                           辻貨物船

語は「蛍」で夏。たしかにねえ、そんな気はするけどね。作者の辻征夫(「貨物船」は俳号)にゲテモノ食いの趣味はなかったはずだから、この発想はどこから出てきたのだろうか。句会の兼題に「蛍」が出て困り果て、窮余の一策で新奇な句をねらったのかもしれないが、それにしても蛍を噛むとは尋常じゃない。でも、人間は長い歴史の中でたいていのものは口に入れてきただろうから、蛍だって実際に食べてみた奴がいたとは思う。あんなに目立つうえに採取しやすい虫が、貪欲な人間の標的にならなかったはずはないからだ。そのときの様子を想像することは、それこそ私の趣味じゃないので止めておくけれど、少なくとも掲句の作者はちらりとは噛んだ感じを想像したに違いない。たとえ軽い冗談のような気持ちでの作句だったにせよ、物を表現するとはそういうことだ。ほんのちっぽけな思いつきにもせよ、発想者は発想の自己責任を取らされてしまうのである。で、作者は想像のなかで吐き出した。変なことを思いついちゃったなと、苦い表情の作者が目に浮かぶ。蛍よりもイメージ的にはマシな「薔薇」を食べてみたのは、これまた詩人の吉原幸子だった。実際に花びらを味わおうとして食べたのだそうだが、「あんなもの、不味くて不味くて……」とチョー不愉快そうな顔つきで話してくれたっけ。そのときのことは彼女のエッセイにもあるはずだが、私は話だけで十分だったので読んでいない。『貨物船句集』(2001)所収。(清水哲男)




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