G黷ェヤ氷句

June 2062005

 花氷うつくしきこゑ冷淡に

                           石原舟月

語は「花氷(はなごおり)」で夏。冷房が普及してからは、あまり見かけなくなった。草花などをなかに入れて凍らせた氷柱で、よくホテルやデパート、劇場やレストランなどに飾ってあった。通りがかりに、ちょっと指先で触れてみたりして……。句のシチュエーションは不明だが、どこかそうした場所での印象だろう。たとえばデパートで目的の商品の売り場がわからず案内嬢に訪ねたところ、「うつくしきこゑ」で教えてくれた。それはよいとしても、彼女の「こゑ」がなんだかとても「冷淡に」聞こえたというのだ。そう聞こえたのはおそらく、そこに「花氷」があったからで、なかったとしたら、単に「事務的に」聞こえる声だったのではあるまいか。それがひんやりとした花氷の置かれた気分の良い空間で、てきぱきと事務的な口調で、しかも「うつくしきこゑ」で答えられたものだから、つい「もう少し親身になってくれても」と思ってしまったというところだ。「うつくしきこゑ」は、うつくしいだけに誤解されやすい。それもたいていが、冷淡(そっけない)と受け取られてしまいがちだ。はじめて放送局のアナウンス・ルームに入ったときの、私の印象もそうだった。そこにいる人はみな「うつくしきこゑ」の持ち主で、みんながラジオのように明晰にしゃべっていて、私にはとてもついていけない浮世離れした世界に思われたものだ。慣れればそこもありふれた世間の一つにすぎなかったのだが、「うつくしきこゑ」たちの醸し出していた独特の醒めた雰囲気は忘れられない。『新歳時記・夏』(1989・河出文庫)所載。(清水哲男)




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