August 122004
掃きとりて花屑かろき秋うちは
西島麦南
粋な句だ。季語は「秋うちは(秋団扇)」で、「秋扇」に分類。床の間に活けた花が、畳の上にこぼれ散っている。さっそく箒で掃き集めたのだが、さしたる量でもないので、わざわざ塵取りを持ち出してくるまでもない。で、そこらへんにあった「うちは」に乗せて捨てることにしたと言うのである。涼しくなってきて、もはや無用のものになりかけていた団扇が、ひょんなことで役に立った図だ。「花屑」を乗せて飛ばないように注意深く運びながら、あらためて作者は団扇をつくづくと眺め、季節の移ろいを感じている。いまどきなら掃除機ですすっと吸い込んでおしまいだから、情趣もへったくれもありはない。昔は良かったと言うつもりはないが、こうした小粋な句の材料が少なくなってきたことに、やはり一抹の寂しさはある。そういう我が家にも、座敷箒は無い。何年くらい前に消えたのだろうか。箒の思い出、ひとつ。子どもの頃は、花屑程度の微量なゴミはそのまま縁側から庭に掃き出したものだ。それからついでに掃き出した箒の塵を払うつもりで、縁側の縁で箒の先を力を入れて叩いたら、そんな音を立てるものじゃないと母に叱られた。「ザッ」という感じの音がするのだけれど、あれは人の首を斬るときの音と似ているのだそうである。『新歳時記・秋』(1989・河出文庫)所載。(清水哲男)
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