仙台はじめ各地で七夕祭りが開かれている。やはり梅雨の最中よりもこの時期がいいな。




2004年8月5日の句(前日までの二句を含む)

August 0782004

 新刊の机上に匂ひ秋立てり

                           佐野幸子

う、秋か。しかし毎年のことながら、「秋立つ(立秋)」とはいっても、昨日に同じ暑い日であることに変わりはない。だからこの日を秋として表現するには、体感だけではままならないことが多い。そこで「目にはさやかに見えねども」のなか、何か一工夫が必要となる。掲句は「机上」の「新刊」書に着目して、その「匂ひ」たつような新鮮な印象で新しい季節の到来を暗示してみせている。読書の秋なる常套句への連想効果を、あるいはちょっぴり期待してのことかもしれない。いずれにしても、新刊書は四季のなかではもっとも秋に似合う小道具だろう。「匂ひ」とあるけれど、これは実際のインクの匂いかどうなのか。昔と違って新聞などを含め、最近の印刷物はインクの匂いがしなくなった。インクそのものが改良されたこともあり、また活版印刷が姿を消したこともあって、とくに新聞で手が汚れなくなったのはありがたいが、開いたときにつんと鼻をつく良い匂いが失われたのは淋しい。私は掲句が載っていた歳時記の成り立ちなどからして、比較的新しい作品と判断し、一応「『匂ひ』たつような」と解釈しておいた。が、古い句であれば、当然新しいインクの香りとなるわけで、こちらのほうがより立秋の感覚にふさわしいとは思うが、実際のところはどうなのだろうか。『炎環・新季語選』(2003)所載。(清水哲男)




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