November 02112003

 さやけしや小さき書肆の大六法

                           山崎茂晴

語は「さやけし」で秋。「爽やか」の項に分類。例外はある。だが、ほとんどの「小さき書肆(しょし)」の品揃えは恣意的と言ってよいだろう。我が家の近くにも小さな本屋があって、たまに入ってみるけれど、棚は目茶苦茶に近い。取次業者の言うままに、売れそうな本を取っ換え引っ換えしていることだけは分かるが、店主の目というものが全く感じられない。これでは日々の仕事に張り合いがないだろうなと、余計なことまで思わされてしまう。作者はたぶん、さしたる期待もなく、そんな小さな本屋に立ち寄ったのだ。で、ひとわたり店を見回しているうちに、なんと「大六法」の置いてあるのが目に飛び込んできた。分厚い「六法全書」だ。店のたたずまいからして、わざわざこの店に六法全書を求めに来る客がいるとも思えない。でも、それは置いてある。毅然として棚に納まっている。思わず、作者は店主の顔を見たのではなかろうか。その店主の心映え、心意気をまことに「さやけし」と、作者は感じ取ったのである。よくわかる。ところで、六法とは具体的にどの法律を指すのか。あらためて問われると、咄嗟には私には答えられない。調べたついでに書いておくと、憲法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法の六つの法律を言う。また大六法・六法全書は、以上の六法をはじめとして各種の法令を収録してある書籍のこと。分厚くなるわけだが、ちなみにこのように各種法令を網羅して一冊にまとめた法律の本は外国には無く、日本独自のものだそうである。『秋彼岸』(2003・私家版)所収。(清水哲男)




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