February 1722003

 世の中よ蝶々とまれかくもあれ

                           西山宗因

者・宗因は、言わずと知れた江戸期談林派の盟主。とにかく(「とまれかくもあれ」が「とまれかくまれ」に言い掛けてある)、「世の中」なんてものは、深刻に考えだしたらキリがない。「蝶々」が花から花へ止まったり移ったりするように、すべからく我々も好き勝手なことをして生きるべきだ(「かくもあれ」)と呼びかけている。「そんなことを言われても無理……」という読者の反応も、ちゃんと計算済みの句だ。というよりも、本人がいちばん「無理」を承知の上での作句なのだろう。この句から自然に思い起こされるのは、誰もが知っている「ちょうちょう」という子供の歌だ。♪ちょうちょう ちょうちょう/菜の葉に とまれ/菜の葉に あいたら/桜にとまれ……。作詞は明治期の野村秋足という人だが、もしかすると、掲句を踏まえているのかもしれない。と思えるほどに、内容が酷似している。こんな享楽思想を、いたいけない子供たちに吹き込んでよいものだろうか(笑)。蛇足ながら、「ちょうちょう」のメロディは日本製ではない。原曲がスペイン民謡であることは、知る人ぞ知るところ。さて、また新しい一週間のはじまりですね。今週もお互いに、「とまれかくまれ」掲句なんぞは忘れて(!?)がんばりましょうや。(清水哲男)




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