December 09122002

 はつ雪の降出す此や昼時分

                           傘 下

のところ、東京地方もぐっと冷え込んできた。もしかすると、今日あたりには、白いものが舞い降りてくるかもしれない。降れば、初雪だ。そんなことを思って「初雪」の句をあちこち探していたら、柴田宵曲の『古句を観る』(岩波文庫)で掲句を見つけた。「此」は「ころ」と読む。句は面白くも何ともないけれど、しかし宵曲の解説に、ちょっと立ち止まってしまった。曰く「読んで字の如しである。何も解釈する必要はない。こんなことがどこが面白いかという人があれば、それは面白いということに捉われているのである。芭蕉の口真似をするわけではないが、『たゞ眼前なるは』とでもいうより仕方あるまい」。私は、このページを書いていることもあって、毎日、たくさんの句を読んでいる。なかに結構、掲句のような「面白くも何ともない句」がある。そういう句に出会うと、くだらないと思うよりも、何故この人はこういう面白くもないことを書くのだろうという不思議な気持ちになることのほうが多い。宵曲の言うように、たぶん私も「面白いということに捉われている」のだろう。が、逆に面白さに捉われないで書く、あるいは読むということは、どういうことなのか。「面白さに捉われない」心根は、ある種の境地ではあると思うが、その境地に達したとして、さて、何が私に起きるのであろうか。(清水哲男)




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