April 2342002

 囀りや少女は走る三塁へ

                           つぶやく堂やんま

ベアーズ
語は「囀り(さえずり)」で春。早朝というほどではないが、午前中の野球のような気がする。そんな爽やかさが伝わってくる。鳥たちの明るい囀りの中で、全力で「三塁へ」と走る少女の姿が美しい。さながら子鹿のバンビのような肢体が、目に見えるようだ。「三塁へ」が、実によく効いている。「一塁へ」でもいけないし、「セカンドへ」「本塁へ」でもいけない。むろん状況にもよるけれど、野手と交錯する確率の割に低い「三塁へ」は、いちばん伸び伸びと弾みをつけて走れるラインだからだ。当人が気持ち良く走っていれば、見ている側も気持ちが良い。最近は男の子の野球好きは確実に減ってきたけれど、逆に女の子の野球人口は増えてきた。子供たちの野球大会を見に行けば、句のような情景にはよくお目にかかる。しかも、活発な女の子にはユニフォームが似合うのですね。女の子と野球といえば、すぐに思い出すのが映画『がんばれ! ベアーズ(The Bad News Bears)』(1976/米)。常々野球映画を撮りたいと言っていた松竹の前田陽一監督が、悔しそうに「しまった、こんなテがあったのか」と天を仰いでおりました。飲んだくれ監督の率いるどうしようもない弱小チーム「ベアーズ」に、助っ人として誘われた女の子・テータム・オニールの凛々しくも可愛らしかったこと。投球フォームも堂に入っていて、日頃から野球に熱心な子かと思っていたら、後にまったく野球をやったことがないと知った。映画の話が来てから、父親のライアン・オニールが猛特訓したんだそうな。相当に運動神経と勘の良い子だったのだろう。さあ、がんばれ! 全国の野球少女たちよ。BBS「つぶやく堂」(NO.2311)所載。(清水哲男)




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