January 31 2002
風鬼元風紀係よ風花す
坪内稔典
季語は「風花(かざはな)」で冬。晴天にちらつく雪。晴れてはいるが、風の吹く寒い日の自然現象だ。句は「風」を三つも持ちだして、徹底的に遊んでいるわけだが、妙に心に沁みてくる。「風紀係」のせいだろう。敗戦直後の民主主義勃興時の学校では、学級委員のなかでも「風紀係」がもっとも実効性を発揮できた。ハンカチを忘れてないかとか、買い食いをしなかったかだとかをチェックする係。いま思うに、この係だけは、戦前からの価値観をそのまま適用でたので動きやすかった。真面目な子が選ばれ、チェックの厳しかったこと。それに引き換え、名のみトップの「委員長」なんて係は、たとえば男女平等の理念はわかるとしても、実際に教室で何かが起きると、具体的にはなかなか反応できないのであった。ついでに言えば、私は永遠の「書記係」で、ついに今でもそのような者である。さて、いまや「元風紀係」は天に召され「風鬼(ふうき・風の神)」となって、あいかわらず地上のチェックには余念がない。「風花」も、彼ないしは彼女の真面目な働きの一貫だと、作者は言うのだろう。せっかく晴れていて、みんなが機嫌よくふるまおうとしているのに、わざわざ雪をちらつかせる(チェックを入れる)こともあるまいに……。一応こんなふうに読んでみたが、どうだろうか。掲句を一読、私たちの「風紀係」だったあいつを思い出した。どうしているだろう。『月光の音』(2001)所収。(清水哲男)
『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます
|