August 2382001

 サーバーはきっと野茨風が立つ

                           坪内稔典

ソコンを扱う当サイトの読者ならば、おそらくは全員が「きっと」ではなく「キッ」となる句だろう。私も思わず「キッ」となった。最近ではワープロを詠んだ句こそ散見するが、国際的なHAIKUの世界はいざ知らず、俳句で「サーバー(server)」が詠まれたのは初めてではあるまいか。だから「キッ」なのである。で、「なになに、サーバーがどうしたって」と辿ってみると、「きっと野茨(のいばら)」なんだと書いてある。そこで自然の成り行きとして、両者がどのあたりで似ているのかを考えることになる。野茨は初夏に白い花を咲かせ、秋には赤い実をつける。いずれも可憐な印象だ。だが、蔓状の枝には鋭い無数の棘(とげ)が……。つまり、花や実のサービスを受けるためには、この入り組んだ棘を素早く辿り、しかも刺されないように用心して通らなければならない。「きっと」そういうイメージなんだろうなと、私は読んだ。パソコンを操るとは、日々この作業の連続とも言える。のほほんと構えていると、思わぬところで棘にやられてしまう。で、そんなサーバーとのやりとりに熱中し、ふと我に返ると表には「風が立」ち、季節は確実に一つ過ぎているのだった。厳密に言えば無季句だけれど、立つ「風」の気配は秋だろう。「秋風」の項に登録しておく。「俳句四季」(2001年7月号)所載。(清水哲男)

[うへえっ]この「サーバー」は、テニスなどのそれではないかとの反響多し。むろん考えました。だとすれば、可愛い顔して棘のあるサーブを打ってくる少女のイメージか。でも「風が立つ」がつき過ぎだと思い、以上に落ち着いた次第です。パソコン狂の妄想かもしれませんが、ま、いいや。この線で突っ張っておきます。MacOs9.2.1へのアップデータが登場しましたね。




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