July 2072001

 葉も蟹も渦のうちなる土用かな

                           依光陽子

日は「土用」の入りだ。春夏秋冬に土用はあって、その季節の終わりの十八日間を言う。陰陽五行説。夏の土用は暑さのピークで、他のそれに比べて季節感が際立つために、単に「土用」といえば夏の土用を指すのが一般的だ。俳句でも夏の季語とされてきた。掲句は、渦巻く水のなかで「葉も蟹も」もみくちゃにされている。「葉も蟹も」に小さな命を代表させているわけで、実際にこんな情景を見られたとしたら、見ている人間も「渦」に吸い込まれ巻き込まれる一つの小さな命に思えてくるに違いない。作者の実見かどうかには関係なく、うだるような暑さの「渦」に翻弄される命のありようが、よく伝わってくる。「土用」で付け加えておけば、今日からの十八日間が元来の「暑中」なので、いまでも律義な人はこの期間中にしか暑中見舞状を出さない。私の知りあいにも、そういう人がいる。また、気になる今年の「土用の丑」は7月25日(水)だ。いずれにしても、夏の真っ盛りがやってきました。読者諸兄姉におかれましては、ご自愛ご専一にお過ごしくださいますように……。「俳句研究」(2001年8月号)所載。(清水哲男)




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