July 3172000

 今植し竹に客あり夕すゝみ

                           佐久間柳居

柳居
ーデニング(園芸)隆盛の折りから、この江戸期の作者の気持ちに同感という読者も多いことだろう。庭の一角にあしらうべく竹を植え、よい景色になった。ひとり満足して眺めていると、折りよくも客がやってきた。こういうときには、誰かに見てもらいたい気持ちが起きる。「どうですかね」「ほお、見事なもんですな」といったやりとり。涼しい風も吹いてきて、一汗かいた肌に心地よい。素直な喜びの情が、読者にも涼やかな風を送ってくる。掲句は、1765年(明和二年)に京都で刊行された『俳諧百一集』に載っている。書名は「百人一句集」の意。芭蕉からはじめて麦林(乙由)で終わる百人を選び、それぞれに一句と肖像を配した木版本だ。句には編者である康工の寸評が付されており、なんだか当欄みたいな趣き(笑)。「江戸俳人名鑑」というところである。以前から本書を手元で見たいと思っていたが、一昨日の句会で江東芭蕉記念館に出かけた際に、復刻版を入手することができた。ちなみに、掲句に付された寸評は「人にも見せたきをりから客来て 心と共に涼しく興セし風情尤も優長也」というものだ。(清水哲男)




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