July 2772000

 運河悲し鉄道草の花盛り

                           川端茅舎

道草(てつどうぐさ)は、北アメリカ原産の雑草だ。日本名で正式には「ヒメムカシヨモギ」と言う。明治期に外国から渡来したので「明治草」「御一新草」とも。日本中のいたるところに生えており、鉄道沿いによく見られるので、この名がついたようだ。ゆうに子供の背丈くらいはあり、小さくて寂しい緑白色の花をつける。この花が群生しているだけで「荒涼」の感を受けるが、掲句のように運河沿いにどこまでも「花盛り」となると、もっとその感は深いだろう。誰も「花盛り」など言わない花だから、なおさらに荒涼感が増幅される。毎年の記憶として、とにかく暑い時期の花だと思っていて、すっかり花期は真夏だと信じ込んでいたけれど、調べてみたら秋の季語だった。といっても、立秋過ぎの残暑厳しいころの花として分類されているようだが……。ところで、調べているうちに「ヒメムカシヨモギ」と詠んだ句に遭遇した。飯田龍太の「ヒメムカシヨモギの影が子の墓に」である。「子の墓」ゆえに、知りつつも「鉄道草」とは詠まなかった親心。生きていれば「ヒメムカシヨモギ」くらいの背丈にはなっていたろうに、いまとなっては「影」ですらないのである。青柳志解樹編『俳句の花・下巻』(1997・創元社)所収。(清水哲男)




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