July 1772000

 朝の僧南瓜の蔓を叱りをり

                           大串 章

だ涼しさのある夏の朝の情景。まずは、作者の弁から。「南瓜の蔓(つる)は縦横無尽に這いまわる。垣根に這いあがり、道に這い出る。甚平姿の僧が暴れん坊の南瓜を叱っている」。寅さん映画に出てきたお坊さん(笠智衆)みたいだ。謹厳実直な僧侶なるがゆえに、ユーモラスに見えてしまう。まったくもって南瓜は元気な植物で、どんなにしいたげられても、自己主張をつづけてやまない。くじけない。蔓も葉っぱも暑苦しい姿で、掲句には「さあ、今日も暑くなるぞ」という気分が込められている。この元気がかわれて、敗戦前後の食料難の時代には、庭の片隅はおろか屋根の上にいたるまでが南瓜だらけになった。来る日も来る日も南瓜ばかり食べていたので、我が家族はみんな顔が黄色くなった記憶もある。そんなわけで、私の世代以上にはいまだに南瓜嫌いが多い。つい近年まで、日本料理屋でもそんな風潮を考慮して、無神経にも南瓜を添えるような店は少なかった。ところが、いまでは大手を振って南瓜が出てくる。ある店で聞いてみたところ、板前の世代交代によるものだと聞かされた。当時のことなど何も知らないので、色彩の鮮やかさから、南瓜をむしろ珍重しているのだという。なあるほど。それでは、叱るわけにもいかない。『大串章集』(1986・俳人協会)所収。(清水哲男)




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