July 0372000

 冷蔵庫西瓜もつともなまぐさし

                           山田みづえ

蔵庫をひんぱんに利用する主婦ならではの発見だ。「もつとも」と言うのだから、肉だとか魚だとかの生臭物も入っている。そのなかで、意外にも「西瓜」がいちばん生臭く見えている。もとより、西瓜にも独特の匂いはあるけれど、ために西瓜嫌いの人も結構いるけれど、作者はそういうことを言っているわけじゃない。西瓜は季節物だし、加えて場所もとるし色彩も派手だから、庫内の情景をがらりと代えてしまう。存在感が生々しく、心理的にはむうっと匂ってくるほどだということ。脱線するが、人間にも句の冷蔵庫のなかの西瓜のように、なぜか生臭く存在感の強い人がいる。季節物のごとく、初対面から注目を集め他を圧する雰囲気のある人。そういう人は、とりわけて芸能界に多い。でも、私の乏しい体験からすると、美空ひばりなどの「大物」には案外存在感はなく、むしろ大物をコントロールする役目の人に多かった感じだ。そりゃ、そうかもしれない。私がインタビューしたときの美空ひばりは舞台(冷蔵庫)から外に出ていたのだし、そのときのマネージャーは仕事の場という庫内にいたのだから。ということは、誰でもそれなりの冷蔵庫のなかにいるときには、本人の自覚とは関係なく、他者を心ならずも圧してしまうこともある理屈となるわけだ。ええっと、何の話をしてたんでしたっけ(苦笑)。『手甲』(1982)所収。(清水哲男)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます