January 2512000

 鬱としてはしかの家に雪だるま

                           辻田克巳

びに出られない子供のために、家人が作ってやったのだろう。はしかの子の家には友だちも来ないから、庭も静まりかえっている。家の窓からは、高熱の子がじいっと雪だるまを眺めている。なんだか、雪だるまの表情までが鬱々(うつうつ)としているようだ。雪だるまには明るい句が多いので、この句は異色と言ってよい。どんな歳時記にも載っているのが、松本たかしの「雪だるま星のおしゃべりぺちゃくちゃと」だ。「星のおしゃべり」という発想は、どこか西欧風のメルヘンの世界を思わせる。したがって、この場合の雪だるまは「スノーマン」のほうが似合うと思う。スヌーピーの漫画なんかに出てくる、あの鼻にニンジンを使った雪人形だ。よりリアルにというのが彼の地の発想だから、よくは知らないが、日本のように団子を二つ重ねた形状のものは作られないようだ。どうかすると、マフラーまで巻いたりしている。こんなところにも、文化の違いが出ていて面白い(外国にお住まいの読者で、もし日本的な雪だるまを見かけられたら、お知らせください)。雪だるまの名称は、もちろん達磨大師の座禅姿によっている。だから、堅いことを言えば、ホウキなどの手をつけるのは邪道だ。それだと、修業の足りない「達磨さん」になってしまうから。(清水哲男)




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