January 2112000

 うつくしき日和となりぬ雪のうへ

                           炭 太祇

国というほどではないけれど、でも、一冬に一度か二度は深い雪のために学校が休みになった。そんな土地で育ったから、この句の味わいはよくわかる。降雪の後の晴天の景色は、たしかに「うつくしき」としか言いようがない。目を開けていられないほどの眩しさ。うかつに軒下などに立っていると、ドサリと雪が落ちてきたり……。そんななかを登校するのは、楽しかった。一里の道のりなど、苦にならなかった。多田道太郎さんの新著『新選俳句歳時記』(潮出版社)に、この句が引かれている。「『うつくしきひより』とはいいことばだな。『うつくしい』『ひより』って忘れられた良い日本語」と書かれている。多田さん、同感です。「うつくしい」は「きれい」とは違いますからね。私が学生時代を過ごしたころの京都では、まだ「うつくしい」という言葉が日常的に生きて使われていた。とくに女性たちは、よく使っていた。「きれい」というとんがった言葉では表現できない「うつくしさ」が、当の女性たちにも備わっていた。いまでも使っている「京女」はいるだろうか。いるような気はする。(清水哲男)




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