January 1812000

 粕汁にぶつ斬る鮭の肋かな

                           石塚友二

は「あばら」。文句なしに美味そうだ。妙に郷愁的情緒的に詠んでいないところもよい。ワイルドな味わいの句。よい映画批評は読者を映画館に誘うが、それと同じように、こういう句を読むと無性に粕汁が食べたくなる。以上で、句については何も書くことなし。これで、おしまい。さて、いつか触れたような気もするが、私は日本酒アレルギーだ。ビールならいくらでも飲めるのに、日本酒はからきし駄目。猪口一二杯で、その場はともかく、翌朝かならず頭痛に悩まされる。だから、正月の他家訪問と田舎の結婚披露宴出席とは苦手である。いずれの場合も、日本酒が出てくる。おめでたい席だから、口をつけないわけにはいかない。ビールのほうがよいなどと無礼なことも言えないので、観念して飲む。そんな私が、粕汁を食べるとどうなるか。生体実験を重ねた結果、やはり翌朝にかすかな反応が出る。風邪を引いても頭痛とは無縁の体質が、少しゆがむのだ。もっとも、奈良漬屋の前を通っただけで顔が赤くなる人もいるそうだから、まだマシではあるけれど……。困ったことに、粕汁の味は好きときている。今夜、この「禁断の味」を賞味すべきかヤメにすべきか。とんでもない句を読んぢまった。と、普段ならそうなるところだが……。(清水哲男)




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