December 12121999

 熱燗や忘れるはずの社歌ぽろり

                           朝日彩湖

いなことに、社歌のある会社に勤めたことはない。朝礼のある会社には勤めたが、それだけでも苦痛なのに、社歌まで歌わされてはかなわない。誰だって(本音をたたけば経営陣だって)、作者のように忘れてしまいたいと思うだろう。しかし、これから「忘れるはず」の社歌が、酒の席で「ぽろり」と口をついて出てしまった。軽い自嘲。小さな風刺。さもありなんと、読者は苦笑いするしかないのである。と言いながら、社歌ではないけれど、私は昔、準社歌みたいな歌を書いたことがある。従業員のレクリエーションの集いなどにふさわしい歌詞をという依頼があり、当方は純粋な詩売人(!?)となって真面目に書き上げた。けっこう難産だった。タイトルは「風となる」(作曲・すぎやまこういち)。依頼人は「宝酒造株式会社」。でも、社内でこの歌が歌われているのかどうかは知らない。一度だけ、同社主催のゴルフ・コンペで流されていたという情報を聞いたことがあるきりだ。そのときに自分の歌詞を読み返してみて、なるほどゴルフ場には似合うかもしれないとは思った。だが、選りによって私の嫌いなゴルフの場で流されたのかと、ため息も出た。「チェッ」だった。俳誌「船団」(43号・1999年12月)所載。(清水哲男)




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