December 02121999

 ポインセチア愛の一語の虚実かな

                           角川源義

言葉は、19世紀のイギリスで決められたものがベースになっている。各種あって特定しがたいが、手元の資料によれば、ポインセチアのそれは「祝福する」とあった。いかにも、この花の華麗さにふさわしい(もっとも、華麗なのは花ではなくて葉のほうだけど)。祝福の対象は恋愛などの「愛」よりも、人類愛などのそれだろう。恋愛というときの「愛の一語」にも虚実はあるが、人類愛の場合には、もっと虚実の濃淡がいちじるしい。「私は人類は大いに愛するが、隣りのババアだけはどうにも気にくわない」と正直に言ったのは、たしか文豪トルストイである。この季節になると、花屋の店先を占領するほどに出回るポインセチア。クリスマス向けというわけだが、その華麗さを買い求める人々の「愛」への思いと、その「虚実」や如何に。苦い一句だ。なお、ポインセチアの命名は、発見者であるポインセットに由来しているそうだ。人の名前なのである。ご存知でしたか。(清水哲男)




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